類上皮がんのKB-31とそれに多剤耐性遺伝子mdrをトランスフォームして作成した培養株KB-G2、更に、マウス白血病細胞のP388を用いて、低磁場の影響を検討し、以下のような結果を得た。 1. KB-31は磁場の印加1時間後にTc-99m-MIBIの取り込みが増加し、その後、磁場の影響が認められなかった。また、抗がん剤の感受性は磁場の有無に関係せず、一定であった。 2. KB-G2は磁場の印加1時間後にTc-99m-MIBIの取り込みが増加して、その後、磁場の影響は認められなかった。抗がん剤に対する耐性は磁場を印加することで、約20%回復し、磁場の影響が認められた。 3. P388は磁場の印加1時間後にTc-99m-MIBIの取り込みが増加し、その後、磁場の影響が認められなかった。また、抗がん剤の感受性にも変化がなかった。 前年度は7.0Tの強い磁場を印加して検討を行ったが、これと比較して: 1. 強度の磁場はKB-31のTc-99m-MIBIの取り込みを抑制する。 2. 低い磁場は短時間の印加で、いずれの細胞についてもTc-99m-MIBIの取り込みを増加させる。 3. 以上の結果はP一糖たんぱく質に対する抗体を添加した場合も、また、P-糖たんぱく質の機能を阻害するverapamilを添加した場合も同様であり、磁場の作用がこれらの影響と拮抗することはなかった。従って、磁場の細胞に対する影響は細胞の種類によって異なり、更に、P-糖たんぱく質に特異的に働いているとは考えにくいと結論した。但し、磁場を印加することで抗がん剤の取り込みを増加させることは可能であるため、磁場印加は多剤耐性を克服するにひとつの手段となりうると考えられる。更に、Tc-99m-MIBIの取り込みは多剤酎性克服に際して、その影響を見る最適なモダリティであることが証明された。
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