研究概要 |
内リンパの動態を計測するための基礎実験として以下のことを行った。 1.ガラス管で各種サイズのファントムを作成した。 2.ファントム内の超低速流を加熱による対流で作成した。 3.大学内のMRI装置において超低速流を測定するための各種MRIシーケンスを試みた。 4.その結果,FASE(Fast Advanced Spin Echo)法による拡散(diffusion)画像が最も最適であると考えられ,流速と信号変化の対比を行った。 当初この実験に際し,より高速イメージング法であるmulti shot EPI(echo planar imaging)法を試みたが静磁場不均一性の影響で画像ひずみが大きく実験が困難であった。一方新たに開発したFASE法による拡散画像は磁場の不均一に強い高速イメージングであり,本研究に用いることが可能であることが判明した。 本年の目標は内リンパの動態をMRIを用いて観測するための基礎的な方法を開発することにあった。MRIは血流などの流れを観測することができ,すでにMR Angiographyをして臨床に応用されている。しかし,内リンパの流速は血流を比較して低速であることと,限局した動きであると思われ,従来のMRAに用いられている方法は応用できない。また,10年度以降に予定されている生体内計測を行うためには,短時間にこの観測を行う必要がある。筆者は近年開発されている多くの高速撮像法のうち,スピンエコー法の延長上にあるFASE法を応用することによりファントム上ではこの計測が可能であることを得た。今後,本法を生体に応用すべく,実験系を整備する。
|