急性活動期の高安動脈炎15症例(全て女性、年齢18-37歳、平均27歳)の胸部単純X線所見について、急性期とその後の経過を最長20年にわたって各症例ごとに追跡検討した。 主な大動脈の変化は、心拡大(20%)、上行大動脈の拡大(47%)、弓部の拡大(80%)、下行大動脈の変化{外縁の不鮮明化(40%)、限局性突出像(60%)、波状不整像(27%)、拡大(40%)}であった。上行大動脈の拡大は弓部や下行大動脈の拡大を同時に伴っていることが多かった。 これらの変化は経時的に著しく変化した。下行大動脈の外縁の変化が最も変化しやすく、治療後早期(1か月以内)に限局性突出像が消失し正常化するものや、3か月-1年の間に平滑化するものがあった。しかしその後はいずれも数年を経て壁不整像が再び出現した。 大動脈の壁の石灰化は初診から速いもので4年後にX線写真上で認められたが、その後は急速に進行した。石灰化は初期から大動脈の拡大を示す症例程著明な傾向があった。 また左傍気管縦隔陰影(T-LSA)の拡大が67%に認められ、急性期の本症の診断に有用と思われた。大動脈の変化と同様治療後は縮小し、左鎖骨下動脈や左総頸動脈の壁の炎症の消退を反映する所見と考えられた。 心拡大は初期から認める例は少数であったが経過とともに出現した。高血圧や大動脈弁閉鎖不全が主な原因と考えられた。 肺血管の変化は区域枝以上の太い動脈の閉塞でないかぎり単純写真上での診断は困難と思われた。高度の肺動脈閉塞を伴った例で肺梗塞を合併した例があった。
|