MRIに用いられるガドリニウム造影剤の透析患者における安全性と、透析による除去能について基礎的実験と臨床症例による検討を行った。 基礎的実験として、ガドリニウム造影剤溶液を血液透析器を用いて潅流した。透析膜には古典的なセルロース膜(AM-SD)・新しい高性能膜であるPMMA膜・陰性の膜電化を持つ高性能膜(AN69)の3種類を用い、イオン性(Gd-DTPA)と非イオン性(Gd-D03A)の2種類の造影剤溶液を潅流した。潅流液のガドリニウム濃度を経時的に定量して除去率を調べた。これらの実験を20回施行して統計学的な検討を行った。Gd-DTPAとGd-DO3Aの各々でAM-SDは他の2種の膜よりも透析効率が有意に劣っていた。Gd-DO3AではAN69とPMMAの差が少なかったが、Gd-DTPAではAN69がPMMAより優れていた。同一膜で比較すると、AN69を用いた場合のみGd-DO3AがGd-DTPAよりも有意に優れていた。他の膜では、Gd-DO3AよりGd-DTPAが若干優れていた。2コンパートモデルによるコンピュータ解析による生体でのシミュレーションにより、97%の造影剤を排泄するためには、10〜15時間が必要と考えられた。 次に、臨床的検討として透析患者10症例にガドリニウム造影剤を投与し、透析前後のガドリニウム濃度を調べた。最初の4時間で約75%が排泄され、97%の排泄には約16時間が必要であった。これらの結果は基礎的検討とよく一致した。副作用については造影剤を投与された50症例で検討したが、特に副作用は認められなかった。 以上の検討により、ガドリニウム造影剤は透析により良好に除去され、透析膜としては高性能膜が古典的膜よりも優れいることが判明した。また膜電荷を持つ膜の場合のみイオン性造影剤と非イオン性造影剤との間に透析効率の差が存在することが判明した。また、臨床的に副作用を認めなかったことから、これらの造影剤は透析患者においても安全に造影剤を使用できると考えられた。
|