研究概要 |
シグマレセプターに対し高い選択性と親和性を有するシングルフォトンCT(SPECT)用画像診断剤の開発を目的に、これまでピペラジン構造をもつ新規リード化合物を分子設計、合成し、得られた化合物の有用性について基礎的に検討してきた。その成果をふまえて、本年度は、リード化合物と構造類似の化合物について構造活性相関から検討し、新規SPECT用画像診断剤の探索を進めた。その結果、化合物分子へのヨウ素の導入は、その分子の生理学的薬理学的性質に大きな影響を及ぼすこと、及び、生体内における代謝に対して、ヨウ素はpiperazine.4位に結合したベンゼン環に導入した場合に比較的安定であることが判明し、1-(3,4-dimethoxyphenethyl)-4-(2-iodophenylpropyl)piperazineが、これまでに報告したリード化合物と同等の、シグマレセプターに対する高い親和性を持つことを見いだした。 本化合物は、マウス及びラットを用いたインビボ実験において、静注投与後標的である脳組織への高い移行性と集積性を示し、脳内で代謝分解されず安定に保持されることが確認された。また、各種レセプターリガンドを用いた競合実験により、本化合物は選択的、可逆的にシグマレセプターに結合することが判明した。さらに、オートラジオグラフィーにより、ラット脳内での詳細な挙動を観察したところ、本化合物の脳内分布は、解剖学的に知られているシグマレセプターの分布と一致し、かつ、シグマレセプターの密度変化に相関する分布を示すことが確認され、シグマレセプターの画像化ならびに定量化が可能であると考えられた。以上のように本化合物は、シグマレセプターのSPECT用核医学画像診断薬剤として有望であると思われた。
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