研究概要 |
1992年3月〜1998年11月までに放射線治療を施行した子宮頸癌新鮮例77例 (I期-10例、II期-15例、III期-41例、IV期-11例)である。62例は放射線治療単独を、15例は手術後に放射線治療を施行した。放射線単独例は生検癌組織より、手術施行例は摘出標本よりDNAを採取し、正常コントロールは各症例の静脈血から採取したDNAを用いた。我々は3p21、6p21、17p13、18q21の染色体異常(LOH,RER)をマイクロサテライトマーカー法で調べた。p53点突然変異(exon5-exon8)の有無をSSCP法で調べ、HPV E6の感染の有無をPCR法で調べた。77例の子宮頸癌のGA(genetic alteration)とp53点突然変異、HPVE6感染の発現率を検討した。3p21、6p21、l7pl3、l8q21の異常の発現率はそれぞれ、20.6%(14/68例)、37.9%(25/66例)、33.8%(23/68例)、24.5%(18/73例)で、6p21の異常が最も多く見られた。6p GAが最多であったという結果はMullokandov らの報告(8)と同様であった。その内、RERの発現率は3p21、6p21、l7p13、l8q21の順に4.4%(3/68例)、1.5%(1/66例)、4.4%(3/68例)、4.1%(3/73例)であった。p53点突然変異、HPVE6感染の発現率は9.1%(7/77例)、34.2%(26/76例)であった。次に病期別に4領域のGA、p53点突然変異、HPV E6感染の発現率を調べた。その結果、17p染色体異常は病期が進行するほど有意に発現率が上昇したが、3p、6p、l8qの異常は病期の進展と相関が認められなかった。さらに、4領域のGAが全て観察された52例について4領域中、3領域以上のGAの有無を調べた。I-III期では11.9%(5/42例)であったのに対して、IV期では60%(6/0例)で、有意にIV期において多領域のGAを認めた(P=0.003)。p53点突然変異はI、II期には見られず、進行期ほど発現したが有意差はなかった。HPV感染は病期と相関しなかった。以上のことから子宮頸癌は進展するほど遺伝子の異常が増加し、特にl7p染色体異常が病期の進行と相関していた。近い将来、各々の癌に適った遺伝子治療が施行される可能性もあり、17p13.1に局在するp53、あるいはp53以外の癌抑制遺伝子が1つのターゲットになる可能性があると考えられた。しかし、 テロメラーゼ活性の亢進、テロメア長の延長は放射線治療抵抗性の症例に多い傾向であったが、安定した検出が困難であった。手技的な問題点も含めて今後検討する必要がある。
|