研究概要 |
骨折が生じ易いか否か,換言すれば骨の強度は,(1)骨塩量に依存する骨の硬度, (2)骨質を表す骨梁構造と,(3)骨の弾性により規定される。 本研究の目的は,骨粗鬆症に合併する骨折のうち,頻度の多い脊髄骨折と「寝たきり老人」の原因疾患として注目されている大腿骨頸部骨折について,その成因を,(1)骨塩定量,(2)骨代謝マーカーの測定による骨代謝状態と,(3)骨の構造(morphometryやgeometry)から検討するものである。 本年度は,(1)脊髄または大腿骨頸部の骨折例と非骨折例の二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)による骨塩定量,(2)骨代謝マーカーである尿中ピリジノリン(Pyr)とデオキシピリジノリン(D-Pyr)濃度の測定,(3)大腿骨近位部のgeometryの測定を行った。その結果,腰椎BMDは,(1)20歳前後の女性で高く閉経や加齢に伴い低下する,(2)脊椎骨折との関係については,非骨折例が最も高く,ついで軽度変形例で,骨折例は最も低値であることが示された。骨代謝マーカーは,(1)20歳代前半から40歳代前半まで低下し,閉経後は増加する,(2)脊椎骨折との関係については,骨折例は非骨折例や軽度変形例に比して高値であることが示された。大腿骨頸部骨折については,年齢,身長と大腿骨頸部を一致させた対照例と比較すると,骨折例は大腿骨近位部のfemur axis lengthなど構造に関与する要素が長いことが示唆された。 次年度は,さらに症例を収集し,骨塩定量,骨代謝マーカーの測定と骨構造の計測を行うとともに,これらから得られたデータを総合的に解析する予定である。
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