研究概要 |
非競合性NMDA受容体拮抗薬phencyclidine(PCP)を投与したラットにストレスを負荷して精神分裂病病態モデルを作成し、抗精神病薬の作用機序に深く関係するdopamine D_2受容体ならびにserotonin 5-HT_<2A>受容体がどのような変化をきたしているかを検討した。PCP5mg/kgをWistar系雄性ラットに腹腔内急性単回投与(24時間後に断頭)、3週間反復投与(24,48時間後,1週間後に断頭)しても、線条体D_2ならびに前頭皮質5-HT_<2A>受容体数には生食投与群と比べて有意な変化は認められなかった。また、PCP5mg/kgの急性単回投与群と3週間反復投与群において、それぞれ最終投与24時間後に急性単回ストレス(2.5mAのfoot shock stressを30秒間、変動間隔平均30秒で30回施行)または亜急性ストレス(同上のセッションを1日1回8日間施行)を負荷したが、これらのストレス条件ではいずれの4群でも統計的に有意なD_2ならびに5-HT_<2A>受容体数の変化は観察されなかった。しかしながら、生食対照群とPCP群とでは、急性ならびに亜急性ストレス負荷後のD_2ならびに5-HT_<2A>受容体数の変化が有意差こそないものの異なっている傾向があり、今後、PCPの用量やストレス条件を展開して再検討する必要があると考えられる。 また、ラットに種々の非定型抗精神病薬(risperidone,olanzapine,perospirone)を3週間反復投与して、線条体D_2ならびに前頭皮質5-HT_<2A>受容体数を検討してみると、その容量や薬物によって、まちまちな変化が認められた。D_2受容体up-regulationは、その薬物のin vivoでの5-HT_<2A>受容体占有率がD_2受容体占有率に比べて十分高いときにのみ阻害されることから、「非定型」的特性を導くためにはその用量設定が重要であることが明らかとなった。一方、5-HT_<2A>受容体down-regulationには、そのような一定の関係は認められなかった。
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