研究概要 |
ラット大脳膜標品における代謝型グルタミン酸受容体を介するhigh-affinity GTPase活性上昇反応についての薬理学的検討はほぼ終了し、この反応が主にgroup IIの代謝型グルタミン酸受容体を介するものであることを明らかにした。また、このような受容体を介する反応とは別に、受容体を介さず直接G蛋白を活性化する物質があることはスズメバチの毒素マストパランを用いてすでに報告済みである(Br.J.Pharmacol.121:1406-1412,1997)が、今回は脳内に豊富に含まれるニューロペプチドY(NPY)を用いて同様の検討を行い、NPYによるG蛋白活性化機構にNPY受容体を介するものと受容体非介在性のものの両方が関与していることを明らかにした。また、各種受容体と共役するG蛋白サブタイプを明らかにすることを目的として、G蛋白機能を阻害するとされる各種薬物の効果についても検討を開始している。現在まで、ラット大脳皮質におけるGABA_B受容体を介する反応がN-ethylmaleimide(NEM)やsuramin、benzalkonium chlorideによって消失することを示した。また、NEMで前処置した膜標品に精製したG蛋白を加えることで消失した反応が回復することも確認している。G蛋白サブタイプに対する特異的な抗体を用いる実験も現在検討中である。一方、ヒト死後脳における受容体感受性high-affinity GTPase活性の性質についての薬理学的検討の結果については論文(Brain Res.789:84-91,1998)として発表した。また、ヒト血小板におけるエピネフリンおよびトロンビン感受性high-affinity GTPase活性については、現在症例を蓄積中である。
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