研究概要 |
MMN(mismatch negativity)というERP(事象関連脳電位)は、脳内情報処理の初期の記憶過程(sensory memory traceとdeviated eventsとの前注意的な比較過程)を反映する。MMNは、自動的反応であるが求心性感覚入力そのものでなく、記憶過程の反映である点で注目されている。研究代表者らは、特殊なMMNパラダイムを考案することにより、MMNの反映する極小の記憶単位が、約200m以下の時間的統合機能(Temporal Window of Integration:TWI)を有し、これが知覚の単位に相当する可能性を示してきた(Yabe et.al.,NeuroReport,1997)。一方、従来より精神分裂病の前注意的な情報処理障害が指摘されてきたが、まさにこれはMMNが関与する事象であると考えられる。本研究では、すでに行われた脳磁図による局在性同定(Yabe et.al.,Psychophysiology,1998)に加えて、このintegrating windowのtemporal durationの詳細な決定が試みられた。刺激自体のdurationによる誤差を防ぐ目的で使用されたclick音にょるMMNを、70msから210msに至る刺激間隔を各ブロックで用いることにより、TWIの大きさを160-170msと同定した(Yabe et.al.,EEG journal,suppl.40,印刷中;6th IEPS Okazaki Award受賞)。ERP dataの精度向上に研究代表者が考案したmedian methodが、時間領域における精度の改善、とりわけlatency jitteringに有用である事が確認された(Yabe et.al.,Special Issueson ERP in BRMIC,1998)。現在まで聴覚以外のmodalityではMMNに匹敵するERP成分は確認されていなかったが、我々はsomatosensory modalityでのMMN相当成分を同定した(Shinozaki et.al.,Cognitive Brain Research,1998)。精神分裂病患者における薬物の覚醒レベルに対する影響をERPの手法で明らかにした(sato et.al.,Schizophrenia Research,印刷中)。 以上の結果を踏まえて、精神分裂病患者のBPRS、TWIの機能の測定が行われている(投稿準備中)。
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