研究概要 |
平成9年度研究実績 平成9年度は,18F-fluoro-α-methyl-L-tyrosine(18F-AMT)を用いたPET検査を健常男性4名(31〜49歳)に対し実施した。18F-AMTを静脈内投与後20-30分に線条体で,40-50分後には大脳皮質など広範な脳内へ明らかな蓄積像が認められた。さらに動物実験を実施し,カテコールアミン合成阻害剤であるα-methyl-p-tyrosineの前投与を行なったラットに,18F-AMTを静脈内投与し,オートラジオグラフィー法によって著明な脳内への取り込み抑制が確認された。このことから本剤が脳組織内のアミノ酸プールに達し,カテコールアミン合成系へ利用されている可能性が得られ,18F-AMTを用いたPET検査によってヒト脳内カテコールアミン代謝を画像診断学的に評価可能であると考えられた。 平成10年度研究実績 平成10年度はインフォームドコンセントの得られた気分障害患者を対象に,18F-FDGと18F-AMTを用いたPET検査を同時期に実施し脳内糖代謝及び脳内カテコールアミン代謝を評価した。 デキサメサゾンを前日に投与した上でコルチコトロピン放出ホルモンを負荷すると,急性期うつ状態にある気分障害患者の70%は非抑制となり,気分障害では視床下部ー下垂体ー副腎皮質系の脱抑制が高率に存在することがわかったが,この非抑制を示した気分障害患者の脳糖代謝が海馬領域と前頭前野において,正常者に比べて有意に低下しており,気分障害における神経内分泌学的異常と前頭皮質・辺縁系機能障害との関連を示唆する所見が得られた。一方,気分障害患者の18F-AMTの脳内取込みは,リガンド投与45分後の静的画像で比較した場合,正常者と有意な差はみられず,18F-AMTの経時的脳内動態をさらに検討する必要があると考えられた。
|