本研究では、DSM-IVの小児崩壊性障害(CDD)の妥当性を検討するため、CDDの10例(M=7.7歳、男7、女3)、DSM-IVでは自閉性障害(AD)とされるICD-9の崩壊精神病(DP)(DP-AD)11例(M=6.5歳、男9、女2)、DSM-IVではPDDNOSとなるDP(DP-PDDNOS)7例(M=6.1歳、男5、女2)および有意味語消失(SL)を呈したAD(ASL)82例(M=5.9歳、男62、女20)の4群(年齢と性比に有意差なし)を、症状・発達に関する退行前16、中8および後24変数で比較した。対比較を含め12変数で有意差があった。退行前は、CDDは1歳前後の分離不安がASLより多く、指差しはDP-PDDNOSとASLより多く、排尿統制はDP-ADとASLより多く、有意にASLは他3群より2語文使用が少なくSL年齢が早く、正常な対人関係はCDDとDP-ADより少なかった。退行に先行する心理社会的ストレスは4群間で有意差があったが、対比較で有意差はなかった。退行中は、CDDは指差し消失がASLより多く、排尿統制退行がDP-ADとASLより多く、ASLで不安症状は他3群より少なかった。退行後は、CDDはてんかんと常同行動がASLより多く、DP-PDDNOSは言語コミュニケーション障害がASLより軽かった。自閉度とIQ35未満の児の率は、4群で有意差はなかった。CDDはASLより退行前発達は良好で退行も明瞭だが、退行約4年後には、てんかん併発率は高いが、発達と自閉度の差はなくなり、DP-ADとDP-PDDNOSとの差も少なくなった。CDDは臨床的妥当性を有し、自閉症の20〜40%を占めるASLとは、発達的予後に差のない可能性がある。
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