研究概要 |
精神分裂病患者の死後脳を用いた生化学研究では、まず、末梢型ベンゾジアゼピン受容体に関する受容体結合実験をおこなったが、23部位中3部位で、特異的[^3H]PK11195結合が、コントロール群と比較して有意に減少していた。この3部位で、スキャッチャード解析を行ったところ、最大結合数だけでなく解離定数も減少していることが明らかになった。また、ドーパミン‐1受容体に関する結合実験では、[3H]SCH23390結合が、大脳皮質の2部位で分裂病群が有意に増加しており、これは最大結合数の増加であることがわかった。このほか、アデノシン‐2a受容体に関しても、[^3H]CGS21680を標識化合物として用いて結合実験を行い、尾状核や被殻において特異的結合数が増加していることを見い出している。 従って、こういった死後脳の生化学的研究によって、慢性分裂病の陰性症状に、末梢型ベンゾジアゼピン受容体、ドーパミン‐1受容体ならびにアデノシン‐2a受容体を介する神経伝達の異常が関与している可能性が示唆された。 実験動物を用いた研究では、幼若ラットに、興奮性アミノ酸受容体サブタイプのひとつであるNMDA受容体の拮抗薬であるMK-801を反復投与して、分裂病のモデル動物の作成を行った。MK-801(0.25mg/kg,twice daily,sc)を生後8日から19日まで反復投与し、生後40日ないし60日の脳内ドーパミン‐1とドーパミン‐2、ドーパミン‐2a受容体に関するオートラジオグラフィー法による結合実験を行ったが、ドーパミン‐1受容体を標識する[^3H]SCH 23390結合が線条体で増加していることがわかった。今後さらに、セロトニン‐2a受容体に関する結合実験ならびに行動実験を計画しており、分裂病の陰性症状との関連を研究する予定である。
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