ミオクローヌスはアルツハイマー病の末期において高頻度にみられるが、その病理学的基盤は依然として不明である。アルツハイマー病のミオクローヌスの病理学的背景を明らかにするために、8例のミオクローヌスを伴うアルツハイマー病(ADwM)、10例のミオクローヌスを伴わないアルツハイマー病(ADwoM)と9例の年齢を合わせた正常対照例の各剖検脳の小脳歯状核の吻側部と尾側部において、3次元画像解析装置Kinetic Image社製、stereologyシステムのプローベ、disecterとpoint sample intercept estimeter(PSI)を用いて、小型細胞と大型細胞についてそれぞれの細胞密度と細胞体の平均体積を定量的に計測した。ADwM群の吻側部と全域の総数(吻側と尾側部の総和)の大型細胞の密度はADwoM群のそれらと比べ有意に高かった。小型細胞の密度については両アルツハイマー病群で有意差はみられなかった。小型細胞・大型細胞比(S/L比)は総数においてADwM群ではADwoM群と比較して有意に低かった。大型細胞の平均体積は吻側部でADwM群ではADwoM群に比べて有意に大きかった。逆に、吻側部の小型細胞の平均体積はADwM群ではADwoM群に比べて有意に小さかった。本研究では、ADwMにおいて歯状核の大型細胞の平均体積の増加と小型細胞の平均体積の減少に加え、S/L比の変化が示された。歯状核の小型細胞と大型細胞の構成比の不均衡とそれらの神経細胞の形態学的変化がアルツハイマー病のミオクローヌスの病理学的背景であることが明らかになった。
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