研究概要 |
今年度は,デイケア利用者70名,生活訓練施設入所者7名,在院1年以上の入院患者82名,計159名を対象にRehab日本語版により、社会生活能力の障害の程度(I群スコア0-40;社会生活可能,II群スコア41-64;援助があれば社会生活可能,III群スコア65-144;社会生活に困難を有する)を評定した。同時に,入院患者については,退院可能性について主治医の判断((1)病状の改善により近い将来(1年以内)退院可能,(2)社会資源が整えば近い将来退院可能,(3)病状等の理由により入院継続が必要)を調査した。その結果、デイケア利用者については,I群67%,II群24%,III群9%,援護寮入所者については,I群14%,II群43%,III群43%,在院1年以上の入院患者については,I群33%,II群30%,III群37%であった。退院可能性については,(1)と(2)を含めると,71%であった。また,I群は74%,II群は76%,III群は63%に退院可能性があると主治医は判断していた。以上より,デイケア利用者の90%以上がI群・II群に属すること,援護寮入所者は,III群に属する場合が43%もあること,在院1年以上の入院患者では,I群・II群で70%以上,III群でも60%以上に退院可能性があることなどが明らかとなった。この退院可能性の結果は,これまでの調査と比較してかなり高い数字と言える・日本においては,1年以上の入院患者が,4分の3を占める状況にあり,今後生活訓練施設など多くの社会資源が必要となる可能性が強く示唆される。同時に退院を促進していくための精神科リハビリテーションの充実やホームヘルプなど新たな施策の制度化が望まれる。本研究は,平成10年度にかけて継続中であり,さらに調査対象者数を増やし,結果の信頼性を高めるとともに,介護保険の導入によって今後大きな課題となる,60歳以上の精神障害者の社会生活能力の障害の分析を計画している。
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