(目的)地域精神保健福祉の重要性が明らかとなった今日においても、長期在院患者の退院は促進されず、今なお5年以上の入院者が5割程度を占めている。社会資源が整えば退院可能とされるいわゆる「社会的入院」者が少なくないことが、各種ニーズ調査で報告されている。そこで、1年以上の入院者の退院可能性についての調査と同時に、社会生活能力の障害に関する調査を行い、その関連性を明らかにした。さらに、デイケア、生活訓練施設、福祉ホームなどの利用者を対象に、社会生活能力に関する調査を行い、退院可能性のある入院者に必要な社会資源の推定を試みた。(方法)協力の得られたデイケア16施設、生活訓練施設6カ所、福祉ホームなど5カ所に調査票を送付し、通所者、入所者の社会生活能力を調査を、退院可能性のある入院者の結果と比較検討した。社会生活能力の調査は、精神科リハビリテーション行動評価尺度REHABを用いた。(結果)デイケア16施設、415名、生活訓練施設6カ所、106名、福祉ホームなど5カ所、51名の結果が得られた。年齢は、デイケアが30台が中心で最も若く、福祉ホームなどが40台、生活訓練施設は50台が中心であった。社会生活能力は、デイケア群が最も高く、福祉ホームなど群、生活訓練施設群と続き、入院者の退院可能性群は、生活訓練施設群よりも社会生活能力がやや高かった。(考察)社会生活能力に関する結果から考えると、退院可能性群にとって最も必要と推定される社会資源は、生活訓練施設で、利用者の年齢も近い。しかし、生活訓練施設は、2年という期限つきの施設であり、50台60台という年齢層にとっては、利用しにくい。今後、長期入院者の退院促進に必要とされるのは、生活訓練施設程度の生活支援があり、しかももう少し長期に利用可能な地域の生活の場と思われる。
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