1、 分裂病の陰性症状および再発脆弱性の動物モデルとして、フェンサイクリジンの単回投与ラットおよびメタンフェタミン間欠投与により行動学的に逆耐性を形成したラットを作製し、大脳皮質、辺縁系中心に脳内7部位(内側前頭前野・背外側前頭葉皮質・側座核・前帯状回・線条体・嗅内皮質・海馬)よりmRNAを抽出した。 2、 ヒトではフェンサイクリジン投与後の覚醒過程で精神症状が出現することが多いことに着目し、フェンサイクリジンの単回投与ラットでは、投与後24時間における効果(遅延性効果)を検討し、まず側座核においてmRNAディファレンシャル・ディスプレイ法を用いて、変化する数個のmRNAを同定した。これらmRNAをRT-PCRにより増幅し、得られたDNA断片の塩基配列決定したところ、そのうちの一つが既報告の塩基配列(機能未知)と一致した。既報告の塩基配列に基づいて合成オリゴヌクレオチドを用いたNothem blotを行い、フェンサイクリジン投与後24時間ラットの側座核での変化を確認した。 3、 以上の研究と平行する形で、特異的抗体を用いた免疫定量により分裂病死後脳における生化学的変化を検討した。細胞骨格蛋白であるα-fodrinおよび細胞情報変換因子であるG蛋白、細胞内情報伝達系で重要な役割を担うホスフォリパーゼCβの左上側頭回特異的な変化を同定した。健常者でみられる左右半球の非対称性が分裂病患者では失われていたことから、分裂病ではなんらかの神経発達異常がその病態に関与する可能性が示唆された。
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