「非アルツハイマー型変性疾患における痴呆の発現機序に関する研究」の3年間の研究では、びまん性レビー小体病(DLBD)を中心に、非定型ピック病と進行性核上性麻痺(PSP)の研究を行った。DLBDでは、レビー小体(LB)の形成機序の検討で、海馬内のユビキチン陽性構造物の多くがperforant pathwayの軸索末端の変性に由来することが示され、これはLBと同様にα-シヌクレイン陽性で、電顕的にもLBと同様の成分を有しており、起始細胞のLBの形成以前に、perforant pathwayの"dying bacl"変性によってα-シヌクレインがニューロフィラメント等に蓄積して形成されることが示唆された。また、LBと神経原線維持変化(NFT)の形成機序の関連についての検討で、DLBD全例の大脳辺縁系にLBとNFTが高頻度に共存し、α-シヌクレイン陽性線維成分とpaired helical filaments(PHF)とは連続性を持たず、LBとNFTは独立して形成されることが示唆された。一方、アルツハイマー病(AD)例の約半数の大脳辺縁系にα-シヌクレイン陽性細胞を認め、その全てがNFTと共存して、α-シヌクレイン陽性線維成分とPHFとは連続性を持っており、α-シヌクレインはNFTの形成の後には二次的に形成されることが示唆された。嗜銀球を非定型ピック病では、脳内にタウの沈着はみられないが、海馬傍回を含む萎縮部皮質にユビキチン陽性樹状突起が、海馬歯状回にユビキチン陽性細胞内封入体が認められ、前頭側頭型痴呆(FTD)の前頭葉変性型および運動ニューロン型と共通の病態機序をもっていることが示唆された。PSPでは、タウ陽性細胞にはNFTを有するものと線維形成を欠くものとがあり、両者の出現頻度によりPSPは定型例と皮質基底核変性症(CBD)に近い2群に分かれること、大脳皮質にみられるNFTはAD-NFTの好発部位であっても、多くはPSP-NFTであることが示された。
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