研究概要 |
この研究はアルツハイマー型痴呆(ATD)の患者脳内に出現する老人斑や神経原線維変化の代表的な構成成分であるアミロイドP成分と,ATDの病因・病態との関連を検討するためにアミロイドP成分の遺伝子や蛋白の発現分布や脳内動態を総合的に検索し,ATD脳中におけるアミロイドP成分の出現機序や,出現の意味,その果たす役割などの解明を試みるものである。 昨年度はATD患者と対象群において脳脊髄液のアミロイドP成分の濃度を測定した結果,2群間で有意差は認めなかった。しかしATD群においてアミロイドP成分の脳脊髄液中濃度と認知機能の指標であるMMSE(mini mental state examination)の得点に相関が認められた。これらの結果を理解するために本年度は同じ群を対象に脳脊髄液中の老人斑形成並びに神経原線維変化と関係が深い可溶性アミロイド前駆体蛋白(sAPP)とタウ蛋白を測定し,アミロイドP成分との関係を検討した。結果はsAPPとタウ蛋白は共にアミロイドP成分との相関を認めなかった。さらにMMSEの得点との相関をsAPPとタウ蛋白で検討したが,有意な相関は認めなかった。以上の結果よりATDおけるアミロイドP成分の関与はsAPPとタウ蛋白の関与とは直接的な関係ではない可能性が高いことが判明した。また同時にATDならびに正常対照脳内においてアミロイドP成分の産生を遺伝子レベルにおいて確認するためにdigoxigeninを結合したリボプローブを用いたin situ hybridization法によるmRNAの検出をATDならびに対照症例にての検索をさらに増やしている。
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