アルツハイマー型痴呆脳におけるアミロイドP成分の遺伝子発現と沈着機序の検討

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09671007
• 研究機関: 順天堂大学
• 研究代表者: 一宮 洋介 順天堂大学, 医学部, 助教授 (10184631)
• 研究分担者: 木村 通宏 順天堂大学, 医学部, 講師 (50234381)
• キーワード: アルツハイマー型痴呆 / アミロイド沈着 / アミロイドP成分 / 脳脊随液中濃度 / in situ hybridization法 / 血清アミロイドA / mRNA分布

研究概要

この研究はアルツハイマー型痴呆(ATD)の患者脳内に出現する老人斑や神経原線維変化の構成成分であるアミロイドP成分と,ATDの病因・病態との関連を検討するためにアミロイドP成分の遺伝子や蛋白の発現分布や脳内動態を総合的に検索し,ATD脳中におけるアミロイドP成分の出現機序や,出現の意味,その果たす役割などの解明を試みるものである。昨年度はATD患者と対象群において脳脊髄液中の老人斑形成並びに神経原線維変化と関係が深い可溶性アミロイド前駆体蛋白(sAPP)とタウ蛋白を測定し,アミロイドP成分との関係を検討した。結果はsAPPとタウ蛋白は共にアミロイドP成分との相関を認めなかった。さらにMMSEの得点との相関をsAPPとタウ蛋白で検討したが,有意な相関は認めなかった。以上の結果よりATDおけるアミロイドP成分の関与はsAPPやタウ蛋白の関与とは直接的な関係ではない可能性が高いことが判明した。そこで本年度はアミロイドP成分の血中濃度や脳脊髄液中濃度と,全身性アミロイドーシスとの関連が深くまた炎症のマーカーでもある血清アミロイドAにおける血液中濃度および脳脊髄液中濃度をATD患者と対象群において測定し検討したところ有意な差は認めなかった。またATD患者群において血清アミロイドAの髄液中濃度とMMSEの得点との関連も併せて検討したが明らかな相関は認めなかった。つまりアミロイドP成分の沈着は他の老人斑や神経原線維変化の成分沈着や全身性アミロイドーシスのアミロイド沈着とは異なった機序で生じている可能性が高く,また炎症反応とも異なったものである可能性が高いことが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Iwamoto N: "Distribution of amyloid deposits in the cerebral white matter of the Alzheimer's disease brain : relationship to blood vessels."Acta Neuropathol(Berl). 93. 334-340 (1997)
• [文献書誌] Nishiyama E: "Distribution of apolipoprotein E in senile plaques in brains with Alzheimer's disease : investigation with the confocal laser scan microscope."Brain Res. 750. 20-24 (1997)
• [文献書誌] Ohnuma T: "A magnetic resonance imaging study in first-episode disorganized-type patients with schizophrenia."Psychiatry Clin Neurosci. 51. 9-15 (1997)
• [文献書誌] 一宮洋介: "総合病院精神科の役割と機能-順天堂大学浦安病院における現状と問題点-"順天堂医学. 42. 483-497 (1997)
• [文献書誌] Arima K: "Argyrophilic tau-positive twisted and non-twisted tubules in astrocytic processes in brains of Alzheimer-type dementia : an electron microscopical study."Acta Neuropathol. 95. 28-39 (1998)
• [文献書誌] Asada T: "Smoking and risk of Alzheimer's disease."Lancet. 352. 818-819 (1998)
• [文献書誌] 一宮洋介: "順天堂大学浦安病院における老人性痴呆疾患センター活動-センター開設以来4年間の相談内容と相談後の経過の検討-"順天堂医学. 44. 313-319 (1998)
• [文献書誌] 木村通宏: "痴呆性疾患の薬物療法"老年精神医学. 13. 597-600 (1998)
• [文献書誌] 岩本典彦: "アルツハイマー病の生化学・分子生物学・アミロイドβタンパク(1)"老年精神医学. 9. 547-553 (1998)
• [文献書誌] 岩本典彦: "アルツハイマー病の生化学・分子生物学・アミロイドβタンパク(2)"老年精神医学. 9. 673-678 (1998)
• [文献書誌] 一宮洋介: "アルツハイマー病の生化学・分子生物学・セカンドメッセンジャー・カルシウム代謝異常"老年精神医学. 9. 1229-1235 (1998)
• [文献書誌] Kimura M: "Assessment of cerebrospinal fluid levels of serum amyloid P component in patients with Alzheimer's disease."Neurosci Lett. 273. 137-139 (1999)
• [文献書誌] 一宮洋介: "1 アルツハイマー病"精神科治療学. 14. 75-82 (1999)
• [文献書誌] 一宮洋介: "仮性作業と仮性対話"最新精神医学. 4. 451-453 (1999)
• [文献書誌] 木村通宏: "アルツハイマー病の生化学・分子生物学・PET・functional MRI"老年精神医学. 10. 355-361 (1999)
• [文献書誌] Asada T: "Qunatitative single photon emission tomography analysis for the diagnosis of transient global amnesia : Adaptation of statistical parametric mapping"Psychiatry Clin Neurosci. 54. 691-694 (2000)
• [文献書誌] 一宮洋介: "老人専門外来通院患者の病状と介護認定"順天堂医学. 46. 227-230 (2000)
• [文献書誌] 木村通宏: "Alzheimer型痴呆の臨床と検査"精神医学レビュー. 36. 44-48 (2000)
• [文献書誌] 一宮洋介: "最新アルツハイマー病研究"ワールドプランニング. 250 (2001)