研究概要 |
アルツハイマー型痴呆がかなり早期におこりはじめ、具体的に臨床症状を呈するまでに一定の時間があることはあまり知られていない。痴呆の原因については、あらゆる方面から研究されているが、特にアルツハイマー型痴呆については不明の点が多い。そこで地域で健康な生活を送っている老人133名に協カいただき、1982年より脳画像を中心とする追跡調査を実施している。第2次調査は1986年、第3次調査は1989年、第4次調査は1992年、第5次調査は1994年、第6次調査は1996年から1998年に行った。第1,2次調査はCT、脳波、ベントン視覚記銘テストを用いた。第3,4,5,6次調査はCTをMRIに変え、他の検査は第1次,第2次と同様とした。T2高信号病変(T_2HSI)は全体では69.5%に認められ、加齢とともに増加した。T_2HSIの出現部位は基底核61.9%、視床39.0%、頭頂葉37.0%、側頭葉12.7%、橋部8.5%であった。これら病変の内T_1強調像で低信号を示すlacunar infarction(LI)は24.6%に認められ、上記同様に加齢とともに増加した。脳室周囲の高信号域(PVH)は38.1%に見られ、やはり加齢に伴って増加した。一定基準に従って判定した脳の萎縮も含めて、これらの所見は年齢との間に深い関係が見られた。しかしペントンテストの結果はT_2HSIと最も関係した。即ち、T_2HSIの数が増すに従ってテスト結果の誤数が増え、正確数が減少し、特に歪み、大きさの誤り、左右の誤りが生ずるなど、認知機能に影響することが観察された。脳の萎縮をT_2HSI、 LI、脳波異常の有無で群間比較を行うと、T_2HSI(-)、LI(-)、脳波正常の群は他の群に比し有意に軽く、一見加齢変化と考えられる現象もなんらかの要因により助長されていることが示唆され、同時に高次脳機能にも影響を与えていることが伺われた。ライフスタイルとの相関をみると、喫煙者でCMIとMWTVが有意な相関を示し、飲酒者とCMIとMWTVが有意な相関を示し、酒量が1合以上のものにおいてCMIとMWTVが有意な相関を示した。一方、服薬者のうち、糖尿病の治療薬を飲んでいるものとFHIと有意な相関を示した。
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