PCR反応を利用して迅速にヒト5-HT4受容体の全翻訳領域を含むcDNAを得るため、既報の5-HT4受容体アイソフォーム、すなわちラット5-HT4S、5-HT4Lおよびマウス5-HT4L受容体cDNAの塩基配列を基に、両者に共通する構造に注目して、5'、3'側に対応する順、逆プライマーを設計した。5'側プライマーには、後に培養細胞おいて5-HT4受容体タンパク質への翻訳を容易にするためのコンセンサス配列を付加した。5-HT4受容体は海馬において比較的高い発現を認める。そこで、ヒト海馬poly(A+)RNAを基質に、random hexamerをプライマーに逆転写酵素反応を行い作製したヒト海馬cDNAを用い、5-HT4S用、5-HT4L用プライマーにてそれぞれPCR反応を行った。PCR反応には、2.5%ホルムアミド存在下に、耐熱性においてTaq DNAポリメラーゼに勝る、Pfu DNAポリメラーゼを使用し、ヒト5-HT4S、5-HT4Lに相当するPCR産物を得た。PCR産物は、pT7 Blueベクターにサブクローニング後、ジデオキシ法に準じ、塩基配列を決定した。その結果、得られたPCR産物は、ヒト5-HT4Sおよび5-HT4L受容体cDNAに対応することが明らかになった。現在までのところ、今回の実験に用いたプライマーでは、反応条件を変えて実施したいずれのPCR反応でも、主要な増幅断片は、それぞれ5-HT4Sおよび5-HT4Lに対応する断片のみであった。ヒトにおいて、5-HT4S、5-HT4L以外の5-HT4アイソフォームが存在するか否かは今後の課題である。現在、得られたcDNAを用い、ヒト神経系由来培養細胞における安定発現系の確立を試みている。
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