本年度は、平成10年度に引き続き、ヒト5-HT_4受容体遺伝子の構造・機能解析を試みた。 1.ヒト海馬、心臓、胎盤、小腸poly(A)^+RNAを用い、オリゴキャップ法によりヒト5-HT_4受容体遺伝子の転写開始点の同定を試みたが、同定できなかった。従って、5'非翻訳領域が予想以上に長い、あるいは非常にGCに富むなどの原因で、PCR産物が生成しなかったものと考えられる。 2.ヒト海馬、心臓、胎盤、小腸poly(A)^+RNAを用い、5'RACE法を繰り返し施行し、転写開始点に可能な限り接近した領域までの構造を明らかにすることを試みた。その結果、ヒト海馬と心臓では、翻訳開始点から上流、600bpは、同一の構造であった。胎盤、小腸では、それぞれ翻訳開始点から上流、約300bp、400bpの領域の構造を明らかにした。しかし、いずれも、転写開始点には到達していない。現在、最近開発されたRT-PCRの方法を応用し、転写開始点の同定を試みている。 3.ヒト5-HT_4受容体遺伝子は、少なくとも13個以上のエクソンから構成される、全長が300kb以上となり、5-HT受容体遺伝子の中では、最も、断片化された遺伝子であることを明らかにした。5'非翻訳領域の構造解析から、胎盤、小腸、海馬・心臓に発現している5-HT_4受容体mRNAに認められるエクソンを同定したが、複数の組織で利用されているエクソンも存在しており、複雑なスプライシング機構の存在が示唆される。 4.3'非翻訳領域も数個のエクソンの選択的スプライシングにより、多様性が認められたが、それぞれの5-HT_4受容体アイソフォームmRNAに関して、3'RACE法による構造解析により、遺伝子上の組織で利用されているエクソンの遺伝子上の位置を同定し、ポリAシグナルを同定した。
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