研究概要 |
前頭連合野は、「提示刺激の空間的側面と時間的順序に関する記憶の組織化」を行なっているとう仮説に従い、遅延記憶課題中にどのような神経回路が働いているのかを調べるため神経伝達物質放出量の変化と前頭葉内での部位差の有無に関して調べた。実験は日本サル3頭を用い、神経活動の特性を調べた後マイクロダイアリシス法による神経伝達物質の計測を行った。 前頭葉におけるドーパミンの放出量の変化を遅延交替反応タスク時(D-ALT)とコントロールタスク時(CON)(それぞれ安静時に対する変化率を計測)について、背外側前頭葉(DL)、弓状核(ARC)、眼窩前頭部(OF)、そして前運動野(PM)において測定した。背外側前頭野に関してはさらに細かく3つの部位(DL(d),PS,DL(v))に分けて検討した。結果は、以下の通りで、背外側前頭葉で遅延交替反応タスク時に増加、さらに詳しく見ると背側部および、腹側部で有意に増加するが、主溝深部では変化が少なかった。同時にグルタミン酸を測定したところDLにおいて、コントロールタスク時におけるグルタミン酸放出量の増加が観測されるというドーパミンとは逆の結果を得た。DLをさらに詳しく見るとDL(d)においては有意の変化が見られないもののDL(v)、PSにおいてはコントロール時に有意に増加した。さらに、急性実験下ではグルタミン酸とドーパミンとの放出量の変化の間に相互作用が見られ、部位の違いと伝達物質放出の特性との間の詳しい関連を検討しているところである。
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