研究概要 |
産褥期うつ状態、いわゆる産褥ブルース症候群は、特に不眠の訴えが多いことから、本研究は、産褥期の睡眠について焦点をあてた。産褥期に適応した健康な褥婦についての睡眠ポリグラフ的研究が、ほとんどないため、平成9年度は、健康な褥婦の睡眠パターンの特徴を明らかにすることを目的とした。 子供の日内リズムができる出産9,12週に、健康な褥婦の終夜睡眠ポリグラフ記録と睡眠の主観的評価を行った。さらに子供の動きが褥婦の睡眠に影響を与えると予想されるので、母親の睡眠ポリグラフ記録と同時に子供の足の動きを測定した。5組の母子の記録を行い、以下の結果を得た。 母親の睡眠のパターンは、9,12週の間に有意の差がなく、むしろ子供の授乳等の世話で起きた夜と起きなかった夜によって睡眠パターンが異なった。子供の世話で起きた夜の覚醒率(就床時間に対する覚醒時間の割合)は18.3%で、起きなかった夜の1.1%に比較して有意に多く、起きなかった夜は、徐波睡眠が増加していた。子供の動きは、母親が起きた夜は多く、起きなかった夜は少なかった。母親が記録していた子供の睡眠日誌より、子供の睡眠・覚醒の日内リズムが12週には、形成されていることを確認した。結論として、子供の日内リズムが形成されていても、母親の睡眠パターンは、産褥早期の覚醒率の多いパターン(1-6週)と少ないパターンの両方が混在することが明らかになった。 以上の成果をアメリカ睡眠学会(サンフランシスコ)に発表した。 今後、産褥期に適応できた褥婦のデータをふやすとともに、産褥期うつ状態の褥婦の睡眠ポリグラフィを記録し、不眠を訴えるほどの睡眠障害が健康な褥婦に比較して存在しているのかを精神生理学的に明らかにしていく予定である。
|