研究概要 |
本年度は、睡眠ポリグラフィより簡易なアクティグラフィの方が、産褥期うつ状態の患者の同意を得やすいと考え、産褥3,6,9,12週の母子のアクティグラフィを行った。この方法は、腕時計のように手に装着して、行動量を測定する方法である。被験者は、11名で、まず産褥期に適応している母親と子供の行動量を連続3日から5日にかけて測定した。母親の夜間の覚醒は、出産3週から12週にかけて、有意に減少した。子供の概日リズムは、行動量の自己相関係数から、出産6週から観察され、12週には全員24時間の概日リズムができ、母親の覚醒が子供の概日リズムに影響されていることが明らかになった。(Psychiatry and Clinical Neurosciences,2000(in press)) 睡眠ポリグラフィでは、産褥期に適応している母親の産褥9,12週に見られたNon-interrupted sleepの評価を、非妊娠女性の睡眠ポリグラフィと比較して検討した結果、Non-interrupted sleepは、深い睡眠が増加していることが明確になった。これは断眠後の回復睡眠と考えられ、母親は眠られる時には良質の睡眠をとっていることが分かった。(SLEEP,(in press abstr.),2000) さて、産褥期うつ状態の生理学的研究は、症状が出ている時に患者から同意を得ることは、かなり困難であったが、睡眠ポリグラフィで1名、アクティグラフィで1名の協力を得られた。共通の知見として、一つは眠っていても睡眠の自覚的評価は低いこと、2つは子供の動きへの対応が遅いことであった。これらの所見は、例数が少ないので今後さらに例数を増やして検討する予定である。
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