研究概要 |
1.赤血球亜鉛濃度を亜鉛テストワコ-キットで測定し、原子吸光光度計による値と比較した。両者の値はほぼ一致し、両者の間にはr=0.97と良好な相関関係が認められた。赤血球亜鉛濃度は正常対照者16例では9.8-15.6mg/lであり、バセドウ病12例では3.2-8.5mg/l、一過性甲状腺中毒症(無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、gestational thyrotoxicosis)6例では9.5-16.0mg/lであった。亜鉛テストワコ-キットによる赤血球亜鉛濃度の測定は、簡便かつ安価(50検体用約12,000円)に行え、また、バセドウ病と一過性中毒症との鑑別法としてTRAbよりすぐれており、日常臨床に極めて有用と思われた。(第6回アジアオセアニア甲状腺学会発表、1997年大阪、第44回日本臨床病理学会総会発表、1997年神戸)。 2.T3が赤血球炭酸脱水酵素1アイソザイム(CAI)およびその構成成分である亜鉛濃度を低下させる機序を解明する目的で、赤芽球系細胞であるBFU-E由来細胞,YN-1,HEL,KU812を用い、生理的な量のT3がCAImRNA発現に及ぼす影響について検討した。T3はBFU-E由来細胞およびYN-1のCAImRNAの発現を、それぞれ1nMの濃度でコントロールの約30%に、および10nMの濃度で約60%に低下させた。一方、HELおよびKU812細胞のCAImRNA発現には影響を及ぼさなかった。これらの結果はT3がそれぞれの細胞のCAI濃度に及ぼす影響と一致していた。以上の結果は、T3が赤血球の骨髄における成熟過程において、CAIの合成を抑制するため、赤血球寿命を考慮すると赤血球CAIおよび亜鉛濃度が約2カ月前の平均化された甲状腺機能を反映するという我々の仮説を支持するものである。(第6回アジアオセアニア甲状腺学会発表、1997年大阪)。
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