研究概要 |
1. 亜鉛テストワコーキットで測定した赤血球亜鉛濃度は、正常対照者39例では12.6±1.3(10.4-15.1)mg/l、バセドウ病38例では7.3±1.6(3.2-9.8)mg/l、一過性甲状腺中毒症(無痛性甲状腺炎、gestational thyrotoxicosis)13例では11.9±1.6(9.5-14.2)mg/lであった。バセドウ病と一過性中毒症との間の重なりあいは1例のみであり、両者の鑑別法としてTRAbよりもすぐれていた(Endocrine J 45:767,1998)。一方、原発性甲状腺機能低下症(PH)19例では14.1±1.1(11.8-15.8)mg/l、無痛性甲状腺炎の機能低下症期(ST)12例では10.4.±1.8(8.7-13.2)mg/lであった。約2カ月前の甲状腺機能を反映する赤血球亜鉛濃度は、STでは一過性中毒症期を反映して若干低値の傾向を示し、正常範囲内ではあるものの高値の傾向を示すPHとの鑑別に有用である(71回アメリカ甲状腺学会発表、1998年)。 2. 培養細胞を用いた検討では、T3が赤芽球系培養細胞株であるYN-1、および正常人末梢血を培養して得たBFU-E由来細胞の炭酸脱水酵素Iアイソザイム(CAl)mRNAの発現を抑制することを見出した。一方、T3は他の培養細胞株であるHEL、KU-812細胞のCAl濃度およびCAl mRNAの発現には影響をおよぼさなかった(Thyroid 8:525,1998)。さらに、これらの細胞におけるT3受容体について検討し、YN-1およびBFU-E由来細胞にはTRα1およびα2mRNAが発現していることを見出した。
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