1 老化マウスでノックアウトされた遺伝子の同定 本老化マウスは、全く新しいタイプのモデル動物である。本マウスはNa/H逆輸送担体を過剰発現するトランスジェニックマウスの開発過程で生まれた。Na/H逆輸送担体cDNAの導入にプロモーターとして用いたヒトelongation factor-1 a をプローブとしてマウス遺伝子ライブラリーより、欠失部のクローニングに成功、この部位よりエクソントラップ法を用いて塩基配列を決定した。この遺伝子(Klothoと命名)は、腎臓、動脈、肺等で発現し、β-glucosidaseと40%のホモロジーを示す2つのドメインをもつ膜貫通型の新規遺伝子である。glucosidaseドメインの一方は植物界のβ-glucosidaseに、他方は細菌のβ-glucosidaseに類似する。以上の研究結果は1997年11月にNature誌に発表された。 2 老化モデルマウスにおけるインスリン感受性亢進の機序の解明 (1)本老化モデルマウス(Klotho欠損マウス)においてインスリン合成、分泌が低下しているにもかかわらず比較的血糖が低値に維持されている機序として、筋肉における糖取り込みの亢進が推測される。そこで糖取り込みの第一段階であるグルコーストランスポーター(Glut4)の発現をノーザンブロッテイング、ウエスタンブロッテイングで検討した。予想通りKlotho欠損マウスにおけるGlut4の発現は、対照群(野生型)に比べて増強していた。 (2)Tumor necrosis factor-a(TNF-a)はインスリン受容体のインスリン刺激性自己リン酸化とIRS-1のリン酸化を抑制することにより、インスリン抵抗性を引き起こす。本老化モデルマウスでは、組織学的に脂肪組織が極めて少ないことが明らかとなり、その結果、インスリン感受性が亢進していると考えられる。 以上の結果は現在、投稿準備中である。
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