1.老化モデルマウスにおける老化抑制遺伝子klothoの発現とインスリン分泌不全の解明 (1)本老化マウスは全く新しいタイプの老化モデル動物である。この遺伝子は、前年度の研究費補助によリ同定されklothoと命名された。Klotho遺伝子の発現は、腎臓、動脈、肺などでβ-glucosidase と40%のホモロジーを示す。高血圧モデルラット、ならびに糖尿病モデルラットにおいて、腎臓のklotho遺伝子の発現は、低下していた。また、これらの動物では血管内皮機能が低下しており、パラビオーシス実験で回復することより、klotho 遺伝子産物(klotho蛋白)は、液性因子として(ホルモン、またはサイトカインの仲間として)機能することが示唆された。またklotho蛋白欠乏による血管内皮機能障害が本モデルの動脈硬化発症に関与することが明らかとなった。 (2)老化によリインスリン分泌能は低下すると考えられているが、その詳細は不明である。本老化モデルマウスでは、 4週令よリインスリン合成が低下していることが明らかになった。インスリン合成低下は、インスリンの血中レベルだけでなく、膵でのmRNAレベルでも低下していた。一方、グルカゴンは低下せず、klotho蛋白欠乏により、特異的に膵β細胞機能が低下していると示唆された。 (3)組織学的には、老化モデルマウスの膵では、対照マウスと比べ、膵β細胞が選択的に減少していた。―方、膵α細胞は、相対的に増加していた。膵島β細胞減少の原因として、免疫細胞の浸潤像は認められず、またアポトーシスは認められないことから、klotho蛋白欠乏による直接的効果によるものと考えられた。 以上の研究結果は、1997年のNature誌、1998年のBiochem Biophys Res Comm誌に報告し、1998年度の臨床代謝学会、糖尿病動物学会、日本糖尿病学会、ヨーロッパ糖尿病学会で報告した。 2.NIDDMモデル動物の開発 (1)インスリン感受性が中程度に高いheterozygoteに長期間、高カロリー食を摂取させ顕性糖尿病が発症するか否か検討する。1999年現在、1年を超えるが、コントロールに比べ耐糖能異常が持続する個体が認められず、高力□リー食摂取のみでは耐糖能異常が出現しないと考えられた。 3.老化遺伝子産物(蛋白)による糖代謝異常発生の予防実験 klotho蛋自の精製は、現在進行中であり、精製されればただちに投与し糖代謝異常の予防実験を施行する。
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