ATP感受性K^+チャネル(K_<ATP>チャネル)は、細胞内ATPによって開閉が調節されるK^+チャネルであり、膵β細胞ではインスリン分泌の鍵となる分子であると同時に、グリベンクラミドなどの経口糖尿病治療薬スルホニル尿素剤の作用部位である。一方、心筋や神経細胞においては、特に虚血時における細胞保護作用や虚血耐性に関与する。申請者らは膵β細胞のK_<ATP>チャネルがスルホニル尿素受容体SUR1と内向き整流性K^+チャネルKir6.2の複合体であること、心筋・骨格筋のK_<ATP>チャネルが新たなスルホニル尿素受容体SUR2AとKir6.2の複合体であることを明らかにした。本研究では、SURによるK_<ATP>チャネルの調節機構を分子レベルで解明することを目的とする。 膵β細胞型K_<ATP>チャネル(SUR1/Kir6.2)と心筋・骨格筋型のK_<ATP>チャネル(SUR2A/Kir6.2)はチャネル閉鎖薬である代表的スルホニル尿素剤グリベンクラミドやチャネル開口薬であるジアゾキサイドに対する反応性が大きく異なる。これらは両者の間で異なるSURサブユニットの相違によるものと考えられる。そこで、SUR1とSUR2Aのキメラを作成してグリベンクラミドやジアゾキサイドの作用点の同定を試みた。作成したすべてのSURのキメラはCOS1細胞にKir6.2と共発現させることによってチャネル電流が認められた。次に、この電流に及ぼすグリベンクラミドやジアゾキサイドの効果を観察した。その結果、ジアゾキサイドならびにグリベンクラミドのSUR1における作用領域をある程度まで絞り込むことができた。現在では、さらに狭い領域を組換えたキメラを10種類以上作成してCOS1細胞に発現させ、^3H標識のグリベンクラミドの結合親和性を検討しており、SUR1の分子内でグリベンクラミドとの結合に特に重要な部位がほぼ同定できている(投稿準備中)。 次に、再構成K_<ATP>チャネルに及ぼすG蛋白質の効果をパッチクランプ法を用いて検討した。その結果、G蛋白質の特にαサブユニットがK_<ATP>チャネルを直接調節していること、その調節様式が膵β細胞型K_<ATP>チャネルと心筋・骨格筋型のK_<ATP>チャネルとの間で異なり、その相違がSURサブユニットの相違によることが明らかになった。
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