これまでの一連の研究において我々は、噛乳類におけるLDL受容体遺伝子ファミリーの機能を解明するために、新たなウサギ受容体の同定を行いその受容体特性および機能を解析してきた。我々が同定した受容体は、LDL受容体基本構造を有しながら、他のファミリー受容体とは異なった構造を有していた。この新奇なキメラ構造を有する受容体LR11(LDL receptor relative with eleven binding repeats)は、LDL受容体遺伝子ファミリーに共通する性質を保持するが、さらに新たな生体機能を有している可能性が推測された。本研究は、これらの背景を基盤に新たなモザイク構造を有するLDL受容体遺伝子ファミリーLR11の構造解析と新たな機能解明を目的として行われた。本研究において我々は、LDL受容体基本構造を有しながら、神経接着因子さらに細胞内蛋白輸送受容体と類似した特異な構造を有するモザイク受容体LR11が、ヒトのみならず、広い生物種において存在し、そのモザイク構造が保存されていること、さらにそれらの主要発現部位が脳神経細胞であることを明らかにした。また、マウス脳を用いた発生過程での解析から、モザイク構造から推測されるLR11の神経細胞の増殖および分化等への関与について、さらにそれらの重要な機能に関与していることが推測された。現在進行しているジーンタゲッティングによる受容体の詳細な機能解析が、今後、LDL受容体遺伝子ファミリーによる広い生物学的意義に加え、ヒトにおけるLR11の新たな生体機能さらに病態における意義を解明しうると考えられる。
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