研究概要 |
(1)細胞膜Ca受容体の機能とその異常病態 悪性腫瘍に伴う高Ca血症の原因であるPTHrPをコードしているヒト遺伝子上にPTH遺伝子と同様のビタミンD反応性抑制エレメントが存在することを見いだし、このエレメントにビタミンD受容体(VDR)が結合すること、ヘテロダイマーを形成しうるレチノイン酸受容体RXRは結合しないことを培養細胞系で示した。VDRの結合は1,25-(OH)2D3によって抑制され、その結果転写活性が低下するが、この抑制作用にはVDRのリン酸化とKu抗原が関与することが示唆された(JBC 273:10901,1998)。(2)細胞外ストレス刺激に対する細胞の応答機構 本研究の過程で、細胞外の浸透圧変化、張力刺激、さらには熱や重金属といったストレスに対して細胞外Ca濃度変化が影響を与える細胞内調節機構が関与している可能性が示唆された。このような刺激の標的遺伝子の一つであるc-fos遺伝子を利用して、調節の分子機構の解析を行った。従来これらの刺激に対する反応は同遺伝子上にあるSREを介するというのが通説であったが、50mM亜砒酸・100μM Cdによるc-fos mRNAの発現亢進が43℃,1時間の熱ショックの前処置で抑制される傾向が観察されたことから、HSP70ないしHSP90を介した転写調節であることを推測し、c-fosプロモーター領域にHSEの存在することを予測した。その結果、ヒト・ラット・マウスのc-fos遺伝子上流、転写開始点より-450塩基付近に、HSEに特徴的と言われるGAA/TTCのブロックが保存されていることを見いだした。このエレメントの機能について、ゲルシフトアッセイ、スーパーシフトアッセイ、レポーターアッセイなどにより、HSF-1の結合するHSEとして転写調節に関与することを証明した(BBRC 254:566,1999)。
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