研究概要 |
1)ヒトPTHrP遺伝子上の負のビタミンD反応性DNA配列(nVDRE_<hPTHrP>)を標識し、成人Tリンパ球MT2細胞核蛋白との間でゲルシフトアッセイ(EMSA)を行った。一方、(positive)VDREとしてオステオポンチン遺伝子のVDRE(VDREmop)を合成し同様のEMSAを行った。競合実験から、この2種のDNAは、異なる組み合わせの核蛋白と結合することがわかった。 2)このEMSAの系にVDR及びRXRの抗体を加えた結果、VDREmopにはMT2細胞核蛋白においてVDR-RXR複合体が結合するが、nVDRE_<hPTHrP>には、VDRのみが、VDREmopとは異なる結合様式で、RXRではない他の核蛋白と結合した。 3)Ku抗原に対する抗体を用いたEMSAで、このnVDRE_<hPTHrP>に対して、VDRと協調的に結合する蛋白の一つにKu抗原が含まれることがわかった。 4)nVDRE_<hPTHrP>、VDREmopをそれぞれ含むレポーター遺伝子をMT2細胞に導入したところ、1,25ビタミンD_3のnVDRE_<hPTHrP>を媒介とする転写抑制現象がこのDNA配列特異的に認められた。この抑制はKu抗原のアンチセンス発現ベクターの共導入によって解消した。 5)ビタミンDはDNA-MT2核蛋白複合体の結合を抑制した。この結合抑制は、酸フォスファターゼ処理で解除された。このことからビタミンDによるVDRの燐酸化がこの現象に関与する可能性が示唆された。 以上から、ビタミンDは、a)nVDREと結合するVDRの立体構造を変化させ、b)さらにおそらくVDRとは別個の部位のnVDREに結合しているKu抗原がリクルートしてくるDNA-PKによってこの構造を変えたVDRを燐酸化させ、c)nVDREとVDRの結合を減弱させる結果、nVDREを介する転写抑制を惹起している可能性が示された。
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