アドレノメデュリンとPAMPの神経内分泌及び神経系に対する作用を調べるために、ヒト下垂体腺腫細胞とラット神経由来細胞株を用いて、電気生理学的研究をおこなった。1.アドレノメデュリン(AM)はヒトプロラクチン産生腺腫からのプロラクチン分泌を用量依存的に促進した。分泌促進の作用機構を電気生理学的手法を用いて調べたところ、AMはこの細胞の膜を脱分極し、活動電位の発火頻度を増加させた。脱分極のイオン機構を調べたところ、非選択性陽イオン電流の活性化により生じていることが判明し、活性化はGs蛋白質とPKAを介していることが明らかになった。AMはヒトに静注した場合プロラクチン濃度を増加させることが知られているが、これがプロラクチン産生細胞に対する直接作用であることが明らかになり、その作用機構が明らかになった。2.PAMPはヒトACTH分泌下垂体腺腫細胞からのACTH分泌を抑制した。この抑制は、PAMPによる膜の過分極反応によっていることが明らかになった。過分極のイオン機構は、内向き整流性カリウム電流の活性化によっていることが明らかになった。過分極反応により、活動電位の発火が減少し、電位依存性カルシウムチャネルを介するカルシウム流入が抑制されることで、ACTH分泌が抑制されると考えられた。3.NGF処理を行い神経細胞様に分化したPC12細胞に対するPAMPの作用を検討した。PAMPはこの細胞において、内向き整流性カリウム電流を活性化して過分極を引き起こした。このカリウム電流活性化の刺激伝達系路を検討した。GDPβSを細胞内にmicroinjectionした細胞や百日咳毒素処理した細胞では、PAMPによる活性化は消失し百日咳毒素感受性G蛋白質の関与が考えられた。G蛋白質のαサブユニットのC末端アミノ酸配列に対する特異抗体を用いた実験により、このG蛋白質がGi3であることが明らかになった。
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