培養血管内皮細胞は増殖因子除去によって容易にアポトーシスを起こすが、我々はETが血管内皮における血清除去後アポトーシスのオートクリン・パラクリン生存因子であることを見出した。この作用は血管内皮に発現しているETBレセプターを介している。線維芽細胞では血清除去後アポトーシスはC-Myc遺伝子の過剰発現によって起こるが、diploidの培養線維芽細胞においても同様にアポトーシスは誘発され、ETは低容量にて著明なアポトーシス抑制作用を示した。線維芽細胞における血清除去後アポトーシスは内因性c-Myc遺伝子の片方のゴビーをジーン・ターゲティング法にてノックアウトして得たヘテロ細胞では著明に減少することからc-Myc依存性であり、さらにETによるアポトーシス抑制作用はc-Myc依存性アポトーシスに対する作用であることが明らかとなった。線維芽細胞での作用はETAレセプターを介していた。血管内皮細胞におけるアポトーシスは血清除去刺激のみならず、一酸化窒素(NO)やNa利尿ペプチドなどETに拮抗的に作用する血管作動性因子によっても惹起され、ETはそれらの作用をも抑制することからETは多くのアポトーシス誘発刺激からの生存因子であることが明らかとなった。血管内皮細胞ではET類似のアポトーシス抑制作用が、降圧性ペプチドであるアドレノメデュリンによってもみられた。ETによる抗アポトーシス作用は血管内皮細胞と線維芽細胞では興なるレセプターを介した作用であるが、それぞれの細胞内情報シグナルについても異なる経路を介していることが明らかになった。すなわち、ETAレセプターを発現した線維芽細胞ではETの作用はMAP kinase kinase-1の特異的阻害薬やdominnant negative mutantを用いて阻害することにより消失することからp42/p44 MAP kinaseを介した作用であったが、血管内皮細胞ではp42/p44 MAP kinaseは関与していなかった。
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