内分泌臓器によるホルモン産生腫瘍の成因に関して近年遺伝子解析も含め多方面から研究がなされ、家族性甲状腺機能亢進症の一部にG蛋白結合レセプターファミリーであるTSHレセプターの遺伝子異常や、成長ホルモン産生下垂体腺腫の一部にG蛋白の遺伝子異常が報告されているが、多くは不明である。原発性アルドステロン症はアルドステロン過剰産生、高血圧、低カリウム血症を示す疾患であり、心疾患等の合併症を高率に有し、予後不良である。その中でアルドステロン産生腺腫は70%以上を占めるが、その成因は不明である。本研究においてアルドステロン産生腺腫(APA)及び特発性アルドステロン症におけるアルドステロン合成酵素遺伝子(CYP11B2)の異常を検討するためにDNAを抽出し、PCRにて増幅後直接シークエンス法によるDNA解折を行ったが、異常が見られなかった。またグルココルチコイド抑制性アルドステロン症の原因遺伝子であるCYP11Bl/CYP11B2キメラ遺伝子の有無について検討したが、APA、IHAにおいて異常な遺伝子は検出されなかった。アンジオテンシンIIレセプター遺伝子や副腎腺腫を合併する多発性内分泌腺腫症I型の原因遺伝子であるMENIN遺伝子に関してもシークエンスを行ったが、異常が発見できなかった。 APA、非機能性副腎腺腫、正常副腎組織におけるCYP11B2mRNAの発現を競合的PCR法にて定量を行うとAPAではCYP11B2mRNAの発現が高値を示した。しかしIHA、APA、非機能性副腎腺腫を有する患者から単球を分離し、単球におけるCYP11B2mRNAの発現を同様に競合的PCR法により検討すると、IHAにおいてCYP11B2mRNAの発現が有意に増加していた。アルドステロン産生腺腫に特異的に発現する遺伝子を解明すべく蛍光ディファレンシャルディスプレイ法を用いて検討した。候補遺伝子をスクリーニングし、ノーザンプロットによるメッセンジャーRNAの発現を検討するとアルドステロン産生腺腫で強く発現し、原因遺伝子の一つである可能性が示唆された。
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