研究概要 |
ヨードトランスポーター(NIS)は甲状腺ホルモンの合成のみならず甲状腺癌の治療において極めて重要な位置を占める。そこで本遺伝子をクローニングしその甲状腺細胞でのプロモーター活性を検討したところ、-291bpより-134bpが細胞特異的発現に重要であることが判明したが、本年度はこの領域の解析を行うと伴に、NIS遺伝子発現におけるサイロトロピン(TSH)応答の解明を試みた。その結果 (1) -240bpより-237bpに甲状腺特異的転写因子、thyroid transcription factor-1(TTF-1)が結合することがDNase I protection assay,Gel shift assayにて確認され、さらにNIS遺伝子発現を促進することが、TTF-1及びNISプロモーター/リポーター遺伝子の共発現実験により示された。 (2) NISプロモーター/リポーター遺伝子及びその5'側よりの欠失ミュータント培養甲状腺細胞、FRTL-5,でのTSH応答性の解析の結果、-420bpより-370bpが重要である。本領域にはTSHで増加する甲状腺特異的核蛋白が結合し、さらにこれは既知の甲状腺特異的転写因子、TTF-1、TTF-2,Pax-8等とは異なる新たな転写因子でありNIS TSH responsive factor-1(NTF-1)と名付けた。 (3) NTF-1結合配列に変異を導入するとTTF-1によるNIS遺伝子発現促進は消失することが判明した。従って、NTF-1と-TTF-1は機能的に関連性を有し、ともにTSHによる甲状腺でのNIS遺伝子発現に関与すると考えられた。
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