細胞内甲状腺ホルモン輸送担体の酵母細胞(S.cerviciae)での発現クローニングについて。レチノイドX受容体(RXR)ホルモン結合領域とGAL4 activation domainの融合蛋白、甲状腺ホルモン受容体(TR)とGAL4 DNA binding domainの融合蛋白を発現した酵母細胞(HFc7)がGAL4の下流のHisを甲状腺ホルモン(triiodothyronine ; T3)依存性に活性化してHis非存在下で生存できるようになる。従ってTRとRXRはDNAに結合していなくてもそれぞれのホルモン結合領域において二量体を形成できる事を示した(業績2)。酵母細胞には細胞内甲状腺ホルモン輸送担体が存在しないため細胞外T3濃度がTRとT3の結合親和性より100-1000倍高いことが必要で、T3濃度10^<-8>Mから10^<-6>Mで濃度依存性の変化を示す。ここへ輸送担体をコードするcDNAが発現した場合T3に対する感受性が増加し10^<-8>MのT3によりHis非存在下で生育が可能になることを指標にpositive cloneを拾い上げる予定である。これまでの予備実験で、輸送担体非存在下に10^<-8>MのT3により生育してくるback groundを抑える条件を確立した。さらにdirectional cDNA libraryとcDNAの発現ベクターを作成した。既にいくつかプラスミド依存性にHis要求性を解除するcDNAクローンが得られている。これらのcDNAがコードする蛋白質の機能が細胞内T3輸送担体である事を確認することと、そのシーケンシングを行う予定である。 細胞実験にて細胞内甲状腺ホルモン輸送担体にT3とは異なるtetrac (tetraiodothyroacetic acid)の輸送担体が存在し、tetrac輸送担体活性がTNF-αやIL6にて増強し、これがsick euthyroid syndromeにおいて血中甲状腺ホルモン濃度が低値を示しながら血中TSH値が上昇してこない原因であることを示した。これらの結果についてはJournal of Clinical Endocrinology and Metabolismに発売予定である。
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