研究概要 |
甲状腺ホルモン輸送担体が細胞により異なり、これら担体をヨードサイロニンアナログが使い分ける事により生体のホメオスタシスが維持されていることを解明した(Ichikawa et al,2000.一部データ未発表)。担体の違いを認識して甲状腺ホルモンの脂質低下作用を増強させた治療薬が見つかった(Ichikawa et al,2000.市川和夫 1999.一部データ未発表)。甲状腺ホルモンのトリヨードサイロニン(T3)の細胞内輸送がレチノイン酸(RA)によって特異的に阻害される為、RA作用の研究を行った。RAによりアポトーシスが惹起される培養ヒト骨髄性白血病細胞(HL-60cells)に all-trans-RA を漸増していきアポトーシスが起きないRA抵抗性細胞株を2株樹立した。1つはRA受容体(RAR α)に遺伝子変異がありRA特異的に抵抗性を示し、他はRAR以外の異常によりビタミンD抵抗性にもなっており核受容体の情報伝達に必要な共通の経路の異常が示唆された(Mori J et al.1999)。これらの細胞株は核受容体の作用の研究や白血病治療に対する薬剤耐性の研究に有用である。また核受容体共通の情報伝達経路としてRXRの研究を進めた。RXRと相互作用する因子を解析して新しくoctamer-binding transcription factor 1(Oct-1)がRXRと相互作用してRXR作用を低下させていることを発見した(Kakizawa et al,1999)。さらにビタミンDのHL-60および培養ヒトmelanoma cellsに対する作用としてβ integrinとα integrin遺伝子発現の減少を介しVery late antigen-4(VLA-4)を減少させる事を報告し(Kaneko A et al,1999)、腫瘍の転移や発育に対するビタミンDの抑制効果が示された。
|