研究概要 |
糖尿病性合併症を有する糖尿病患者血小板を単離し、血小板をホモジネート後に細胞質、膜、細胞骨格画分に分離後、血小板に豊富に存在するPKCα,β,δ,ζの各分子種の免疫活性をウエスタンブロット法で検討し、正常対照と比較した。従来、PKCは高血糖により、活性化され、これが血小板凝集亢進に働くことが糖尿病性合併症の発症と関連があることが推察されていた。この検討により、糖尿病性合併症の内、神経症、網膜症を有する患者では、PKCα,β,δ,ζ共に細胞質、膜画分で免疫活性が増加していた。一方、腎症では、顕性腎症のない症例ではPKCα,β,δ,ζは増加していたが、顕性腎症のある例ではPKCβのみはむしろ血清クレアチンと共に低下した。以上より、糖尿病性合併症の進展とPKC分子種の異常との関係を更に検討する必要があると考えられた。 一方、血糖のコントロールは良好であるが、血小板の凝集が強く糖尿病合併症の強い症例での、低分子量G蛋白であるrhoAの活性亢進もその下流のphosphatidylinositol 3-kinaseの活性化を介して、二次凝集を促進すると考えられている。これら糖尿病患者血小板での、rhoAの免疫活性や、【α-^<32>P】GTP結合活性を検討すると上昇していることが家族的に証明され、FfamilialなrhoA活性の増加はなんらかの遺伝子異常によることが推察され、さらなる分子生物学的検討が必要と考えられた。 そこで、ヒト血小板にジーンパルサーを使用して、GTPγS,やrhoA、PKC分子種を細胞内に導入し、その凝集への影響を検討した。糖尿病患者血小板は正常者に比較して、更に凝集の亢進をみた。以上より、糖尿病性合併症の進展予防にこれらの分子生物学的検討が必要であることが示唆される。
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