研究概要 |
膵島細胞においてCD38が細胞内カルシウムシグナリングに関与している可能性について検討した。 培養したMin6細胞に、抗CD38抗体-FITC標識二次抗体によって蛍光染色したところ,蛍光はMin6細胞の細胞表面(びまん性、あるいはクラスター状)に,一部は細胞質内にも認められた。抗CD38抗体処理によってD-glucose(20mM),D-mannose(20mM),L-arginine(10mM),a-ketoisokaproic(10mM),carbamylcholine(100mM),Glucagon(1mM),Forskolin(10mM)などなどによるインスリン分泌が強く抑制された。しかしながら,Glibenclamide(1mM)によって促進されたインスリン分泌は抗CD38抗体処理によって抑制されなかった。Fura2蛍光による[Ca2+]iの観察を行ったところ,抗CD38抗体処理はD-glucose,carbamylcholineによる[Ca2+]i上昇を抑制し,逆にGlibenclamideによるそれは増強した。Alloxan,ninhydrinなどの膵B細胞毒は,D-glucoseと類似するもののオッシレーションを伴わない[Ca2+]iの上昇を起こし,このような[Ca2+]iの上昇がB細胞DNAの細断化(Fragmentation)を惹起して,死(アポトーシス)を誘発した。抗CD38抗体処理はalloxan、ninhydrinなどの膵B細胞毒による[Ca2+]i上昇を抑制した。 さらに、糖尿病においてCD38に対する自己抗体が出現するか否かについて検討した。 IDDMのモデル動物であるNODマウスにおいては、膵島炎が出現する7-10週齢では約80%に抗CD38抗体が見られた。 以上の事実から,CD38〜ADP-ribosyl cyclase-cADPR系は膵島細胞内カルシウムシグナリングに関与し,インスリン分泌における情報伝達系の重要な一部を担っていること、さらに、糖尿病の発症にも関与する可能性が推測された。
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