研究概要 |
甲状腺組織特異的転写調節因子Pax-8はサイログロブリン(TG)遺伝子の転写調節領域に結合する。我々はこれまでPax-8のDNA結合活性がレドックス(reduction-oxidation, redox)制御により調節されることを報告した。そこで、本研究ではPax-8のレドックス制御に関わるcysteine残基(レドックス感受性Cys)の同定を試みた。ラットPax-8には6つのCysが存在し、N端より45(C1),57(C2),117(C3),147(C4),207(C5),239(C6)番目に位置している。これらのCysの内C1,C2,C3は結合ドメインであるpaired domain(PD)に存在する。そこで、Pax-8のPDのみのDNA結合活性を検討したところ、wild typeのPax-8と同様、酸化剤diamideにより結合が消失し還元剤DTTにより回復した。この結果は、レドックス感受性CysがPD内のC1,C2,C3のいずれかであることを示唆した。次に、これら3つのCysを単独あるいは種々の組み合わせでserineに変異させたPax-8mutantを作成し,そのin vitro翻訳産物のDNA結合能がどのようなレドックス制御を受けるかを検討した。その結果、C1あるいはC2の単独変異Pax-8mutantでは上述のレドックス制御が観察されたが、C1,C2を同時に変異させたmutantでは、diamide存在下でもDNA結合活性が認められ、レドックス制御が消失した。即ち、Pax-8のDNA結合ドメインに存在するN端側の2つのCysがレドックス制御に関わることが明らかになった。これらのCysはすべてのPaxファミリー蛋白で種を越えて保存されているため、レドックス制御はPaxファミリーに共通した制御機構であることが示唆された。
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