研究課題/領域番号 |
09671043
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
神部 福司 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教授 (00211871)
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研究分担者 |
長屋 敬 名古屋大学, 環境医学研究所, 助手 (80262913)
村田 善晴 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (80174308)
妹尾 久雄 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (40135380)
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キーワード | Pax-8 / 甲状腺ペルオキシダーゼ / レドックス制御 / PDTC |
研究概要 |
近年、種々の細胞で、H_2O_2等の活性酸素種(ROS)が、細胞の機能維持や増殖に関与する細胞内シグナル伝達分子として重要な役割を果たしていることが報告されている。甲状腺細胞は甲状腺ホルモン合成の為にH_2O_2を産生する。そこで、甲状腺細胞においてROSが細胞の機能維持や増殖に役割を果たすか否かを検討する目的で、ROSの消去剤として知られる抗酸化剤PDTC(pyrrolidine dithiocarbamate)が甲状腺細胞の分化マーカーと増殖に及ぼす影響を検討した。ラット甲状腺細胞株FRTL-5を40mMのPDTCの存在下で12時間培養後、ノザン法でTG、TPO、Pax-8、TTF-1、GAPDHの各mRNA量を検討し、ゲルシフト法でPax-8、TTF-1、TTF-2のDNA結合活性を解析した。また、^3H-thymidineの取り込みにより細胞増殖を検討した。更に、H_2O_2の産生を定量した。PDTC添加によりTPO、Pax-8mRNA量はそれぞれ24%、41%に減少した。一方、TG、TTF-1mRNA量には変化が無く、GAPDHmRNAは140%に増加した。この結果からPDTCの作用は各遺伝子に特異的であることが示された。このようなmRNA量の変化を反映して、Pax-8のTPOプロモーターDNAへの結合活性は低下したが、TTF-1、TTF-2結合活性は変化しなかった。この結果は、TPO遺伝子の発現調節にPax-8が重要であることを示している。また、PDTCにより^3H-thymidineの取り込みは約3倍に増加した。一方、PDTC添加により、FRTL-5細胞のH_2O_2の産生は45%に減少した。以上の結果より、甲状腺細胞の分化マーカーの発現や増殖にH_2O_2等のROSが関わるレドックス制御が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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