研究概要 |
Yeast two hybrid systemを用いて甲状腺ホルモンレセプター共役因子のクローニングを行い、Nuclear co-repressor(N-CoR)のhuman homoloque(hN-CoR)と考えられるクローン(Bl)を得た。colony hybridization法および5^1RACE法によりhN-CoRの全長のクローニングを試みた結果、wild typeに加えて3つのvariantの存在を明らかにした。それらは、wild type N-CoRのアミノ酸1018番目に56個のアミノ酸の挿入のあるもの(hN-CoRvl)、アミノ酸1857-1977の欠失(hN-CoRv2)、およびカルボキシル端の120個のアミノ酸が新たな45個のアミノ酸に置換したもの(hN-CoRv3)であった。 hN-CoR cDNAを用いたFluorescence in situ hybridization(FISH)法によりhN-CoRの染色体位置を決定したところ、それは第17染色体短腕の11.2の部位にのみ存在した。このことはhN-CoR variantは1つの遺伝子座から転写されるsplicing variantである可能性が示唆された。hN-CoRv3のアミノ酸置換の部位は核内受容体との結合に重要な部位とされるので、hN-CoRv3の核内受容体結合特性をyeast two hybrid法により検討した。その結果、wild type N-CoRはTR,RARと結合するのに対して、hN-CoRv3はTRとは結合せず、RARと結合することが示された。 さらに、N-CoR variantの組織発現を8種類のヒト培養細胞株より抽出したRNAを用いたRT-PCR法により検討した。その結果、hN-CoRv2およびhN-CoRv3はwild typeと比較してすべての検討した細胞株でわずかしか発現していなかった。一方、hN-CoRv1の発現は細胞株により異なり、NB-1(neuroblastoma cell line),Hela(cervical carcinoma cell line),HOS(osteosarcoma cell line)の3つの細胞株においてwild typeよりその発現が増加していた。hN-CoRv1のアミノ酸挿入はコリプレッサーの転写抑制部位の近傍であることより、このvariantの発現量の変化がコリプレッサーによる転写抑制活性を修飾する可能性が推測された。
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