研究概要 |
腎疾患の発症・進展において重要と考えられる組織レニン-アンジオテンシン系(RAS)、また抑制系のアドレノメデュリン(AM)およびNa利尿ペプチド系の機能的意義について、以下の知見を得た。 1. 腎障害モデル動物を用いたRASとNa利尿ペプチド系、AM系との相互作用に関する検討 C57BL/6マウスでRAS活性化に続き糸球体肥大・硬化を来す5/6腎摘モデルを作製し、約2倍の著明な糸球体面積増加と糸球体内TGF-β、fibronectin発現亢進を認めた。慢性的なNa利尿ペプチド過剰を示すBNP-transgenic mouse(BNP-Tg)では、糸球体肥大およびTGF-β、fibronectin発現の著明な抑制を見出した。抗糸球体基底膜腎炎でも、BNP-Tgで蛋白尿減少効果を認め、これら腎保護作用の機序を検討中である。 また、AMは腎尿細管に多く発現するが、別のRAS活性化モデルである尿管結紮水腎症モデルで、間質線維化とともにAM発現が著減することを見出し、内因性AMが保護的に働く可能性が示唆された。 2. AII受容体によるMAPキナーゼ(MAPK)を介する細胞機能調節の検討 これらのモデルでの腎障害の機序のひとつにAIIによるMAPKの活性化が考えられるが、培養腎メサンギウム細胞において、AIIによるAT@@S21@@E2受容体を介した細胞増殖促進およびTGF-β発現亢進作用に対しAT@@S22@@E2受容体刺激が抑制作用を示し、この際MAPK(ERK,p38)カスケードの抑制とアポトーシス誘導を認めた。 3. 培養メサンギウム細胞におけるAM発現とその意義の検討 AMに対する高親和性モノクローナル抗体を作製してRIAを確立しAM分泌を検討したところ、培養メサンギウム細胞から内皮細胞や血管平滑筋細胞に匹敵するAM分泌を認め、内因性のAMがautocrine/paracrine調節因子として細胞増殖抑制に関与することを示した(Kidney Int.)。 4. AM受容体活性修飾蛋白(RAMP)のクローニング AM/CGRP受容体にassociateしてリガンド特異性を決定する蛋白としてヒトRAMPファミリーが同定されたが、動物モデルでのAM受容体調節を明らかにするため、ラットRAMP1,2のクローニングを行った。
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