[目的]レプチン及び、その下流に位置する脱共役蛋白質3(UCP3)の病態生理的意義を検討した。 [方法]肥満の家族歴のある日本人のBMI>30の高度肥満者17名でレプチン受容体遺伝子の全エクソンの構造をダイレクトシークエンス法で決定した。遺伝子多型の頻度を、46名の日本人のBMI>30の高度肥満者と64名のBMI<25の非肥満者でPCR-RFLP法とPCR-SSCP法により検討した。マウスUCP2cDNAとのホモロジーを用いて、ラット骨格筋からUCP3cDNAをRT-PCR法にょり単離同定した。高脂肪食負荷によるラットUCP3遺伝子発現を検討した。遺伝性肥満Wistar fattyラットでピオグリタゾン投与によるUCP3遺伝子発現を検討した。SDラット副精巣周囲白色脂肪初代培養でピオグリタゾンによるUCP3遺伝子発現調節を検討した。 [結果]日本人高度肥満者で、レプチン受容体遺伝子の7箇所の遺伝子多型を明らかにした。すべての遺伝子多型で、非肥満者と高度肥満者の間で有意な頻度の差は認められなかった。ラット骨格筋よりUCP3cDNAをクローニングした。高脂肪食肥満ラットで骨格筋でUCP3遺伝子発現の2.0倍の増加が観察された。ピオグリタゾン投与Wistar fattyラットでUCP3遺伝子発現は副精巣周囲白色脂肪、後腹膜脂肪、褐色脂肪で2.1倍、2.0倍、1.6倍に有意に上昇した。ラット白色脂肪細胞初代培養系でUCP3遺伝子発現はビオグリタゾン10^<‐5>M以上の濃度で、用量依存性に有意に上昇した。 [考察]日本人高度肥満者の大部分ではレプチン受容体遺伝子多型が、肥満の原因ではないことが明らかになった。ラット骨格筋からUCP3をクローニングした。高脂肪食肥満で骨格筋のUCP3遺伝子発現の増加、チアゾリジンによる白色脂肪のUCP3遺伝子発現の増加を明らかにした。
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