研究概要 |
(1) 肥満遺伝子および(レプチン)の分泌機構に影響を与える生理活性物質の検索 ラット初代培養脂肪細胞をプレート培養し簡便迅速に多数の培養をできる系を確立しこれを用いて(1)蛋白合成に直接影響すると考えられる核内転写因子(2)細胞膜表面の受容体に結合する生理活性物質(3)酵素阻害剤(C-kinase,A-kinase,acylAoA synthase等の阻害剤、(4)新たな物質の影響を培養液中の分泌ラジオイムノアッセイによるレプチン蛋白定量、レプチン遺伝子発現をNothern blotをもちいたmRNAの定量を行った。 (2) 脂肪細胞における核内転写因子PPARvのリガンド(thiazolidinedione)のレプチン産生とインスリン作用に及ぼす影響。インスリン作用改善剤であるthiazolidinedioneは、脂肪細胞のレプチンのmRNAおよび蛋白分泌の両者を抑制し、レプチン産生の抑制を来たした。また一方で脂肪細胞におけるインスリン作用(糖取り込み)を増強した。一方外因性にレプチンを投与しても、脂肪細胞におけるレプチン産生およびインスリン作用にも影響を与えず、レプチン自身の脂肪細胞に対する直接作用は認められなかった。 (3) レプチンの骨格筋培養細胞のインスリン作用へ及ぼす影響。骨格筋培養細胞(L6)においては24時間レプチンの共存下でインスリン作用(糖取り込み)に対する直接作用は認められなかった。 (4) レプチンのin vivoにおける作用(レプチンtransgemnic mouse)レプチントランスジェニックマウスにおいて、脂肪組織の消滅が認められ、in ivoのインスリン作用(ブドウ糖負荷、インスリン負荷試験)の増強が見られた。末梢の直接作用として脂肪細胞の萎縮作用また肝臓を介する作用等も考えられ、また末梢作用だけよりも中枢を介する作用が主体である可能性が示唆された。 (5) ヒトにおけるレプチン血中濃度。ヒトにおける血中のレプチン濃度は肥満度、BMI(Body Mass Index)と有意に相関し、さらに男女差の存在を認めた。しかし加齢による影響は見られなかった。一方ヒトレプチン遺伝子の多型性との相関は認められなかった。
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