1. ラット初代培養成熟脂肪細胞におけるレプチンの転写調節機構 ヒトのレプチン遺伝子5′-隣接領域をクローニングし、5′側より順次欠失した遺伝子断片をルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流に連結したプラスミドを作製した。それぞれのプラスミドをラット副睾丸周囲脂肪組織より調整した初代培養成熟脂肪細胞にトランスフェクションして、転写活性の指標としてルシフェラーゼ活性を測定した。本研究により、成熟脂肪細胞におけるヒトのレプチン遺伝子転写調節において転写開始点-136までの領域に存在するC/EBP結合部位と2カ所のSp1結合部位が関与することが明らかになった。 2. ヒト絨毛細胞株BeWo細胞におけるレプチンの転写調節機構 上で作製したプラスミドをBeWo細胞にトランスフェクションして、転写活性を測定した。本研究により、レプチンの絨毛細胞特異的転写には、レプチン遺伝子5′-隣接領域の特定の塩基配列と絨毛細胞にのみ存在する核蛋白質の相互作用が関与することが明らかになり、脂肪細胞における転写調節とは異なることが示唆された。 3. 脂肪細胞とBeWo細胞におけるレプチンの産生調節 初代培養成熟脂肪細胞においてはforskolinによりprotein kinase Aを活性化することによりレプチン産生は抑制された。まPMAは脂肪細胞におけるレプチンの産生に影響しなかった。一方、BeWo細胞におけるレプチン産生はforskolinあるいはPMAの添加によって増加が認められた。この増加は、forskolinと同時にprotein kinase A阻害剤(H89)、あるいはPMAと同時にprotein kinase C阻害剤(H7あるいはstaurosporine)を添加することにより遮断された。以上より、絨毛細胞と脂肪細胞におけるレプチン産生調節機序は異なることが明らかになった。
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