研究概要 |
膵ポリペプチド(pancreatic polypeptide:PP)は,膵ラ氏島第3のホルモンであり,ペプチドYY(peptide YY:PYY)及び神経ペプチドY(neuropeptide Y:NPY)とともに,PPファミリーペプチドと総称されている.PPは,膵外分泌抑制作用・胆嚢収縮抑制作用や食欲抑制作用など有し,消化管の分泌運動や摂食行動に生理的役割を演じているものと推測されている. そこで今回,PPを欠損させたミュータントマウスを作製し,その消化官機能や接触行動に及ぼす影響を解析しPPの生理作用を解明するとともに,脳幹部(vagal complex)を介する消化管ホルモンの生体調節機構の重要性に関しても検討を加えることを目的とした. 現在までのところ以下の成績が得られている. 1.マウスの遺伝子をクローニングし,ターゲティングベクター作製も終了した. 2.NPY,PPなどPPファミリーの他のペプチドによる代償機構の存在も考慮する必要があるために,PYY遺伝子もクローニングした.(NPYノックアウトマウスはすでに作製されている.)特にPP,PYYは遺伝子上の位置も近接しているために,ダブルノックアウトマウス作成も容易である. 3.現在ES細胞によるセレクションを行っているところで,PPノックアウトマウスに関しては年内の誕生をめざしている. 4.ノックアウトマウスの解析に関しては,すでにNPYトランスジェニックマウスでの解析経緯から,食行動をはじめとする行動解析はすでに準備は終了している.マウスの胃排泄能の解析手段も確立しているが,可能であればトランスデューサーによる胃運動の測定を行いたいと考えている.
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